2010年6月13日、オーストラリア、ウーメラ砂漠の南端、Tarcoola(ターコーラ)で待ち構えていた、光学観測班の前に、それは還ってきた。
観測班は、JAXA、大阪市立科学館、台湾中央大学などのメンバーで構成された。超高感度カメラNC-R550aは、その光跡を余すことなく捉えていた。「来た来た!」「はやぶさ、おかえりー!」という感嘆の声とともに・・・・・
画像を撮影した大阪科学館の飯山青海さんのお話

飯山:ずっと天気が悪くて、このまま見えないかと何度も諦めかけました。でも当日はすっきりした晴れになりました。
何度もドーム内で練習をしてきたので、何とか最後まで追っかけるぞ、そればかりを思っていました。流れ星をずっと追ってきた観測屋としての意地みたいなものでしょうか。
NC-R550aは10倍程度のズームが出来るのですが、視野が7度と小さいので、はずさないように、それに一番気を使いました。

秒時 ※上記映像の秒時に基づいて解説
光り始める。
飯山:「来た来た」
次に、アンテナやサンプラーホーンといった外部に露出している機器が分離していく。
飯山:「まぶしい、スミアが出ている」
飯山:「カプセル、前にいるよね・・・」
カプセルが長い尾を引いている。
カプセルだけが長い尾を引いて、だんだん赤くなってくるのがわかる(カプセル表面の熱輻射の輝き)。
といいながらも懸命の追跡。
まだ、カプセルの赤い輝きは残る。
これ以降はダークフライト(輝きのない飛行)へ。
秒速12kmを越える超高速の大気との摩擦にも耐え、カプセルはウーメラの砂漠へ還ってきた。NC-R550aは、「はやぶさ」本体がばらばらになりながら燃え尽きる瞬間を、そして『「はやぶさ」から命のバトンを受け継いだ光の玉手箱』(的川泰宣さんによる)カプセルの、最後の赤化した輝きをも捕らえ続けた。
回収のために「はやぶさ」カプセルの軌道を正確に決めるという本来の目的を果たすだけでなく、見るものに、命の連鎖といったものをも感じさせる映像。
飯山:とにかく、おかえり、おめでとうという気持ちで一杯だった。
「はやぶさ」を造り上げ、運用してきたチームのみなさんに「よかったですね」と伝えたい。
この瞬間、自分が長年やってきた流星と、宇宙が繋がった感があった。勇気とか情熱とか、そんな言葉をもらった気がしました。
こういった感動を与えてくれる探査が、今後とも続くことを祈っています。
そんな言葉で、飯山さんはオーストリアの日々を締めくくった。
飯山 青海(いいやま おおみ)
南阿蘇ルナ天文台研究員、姫路市立「星の子館」天文担当を経て、平成14年より大阪市立科学館で学芸員として勤務。科学館においては、プラネタリウムの投影などに携わっている他、流星・彗星・小惑星を中心に惑星科学分野と化学分野を担当。また、「日本流星研究会」の幹事も務めている。
阿部 新助(あべ しんすけ) 台湾中央大学 助理研究学者

