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海外へ電話をかけたり、ファクシミリを送信したり、あるいはインターネットで電子メールを交すといったことは、今では当たり前の時代になっています。では、皆さんはどのような仕組みで遠く離れた海外と情報のやりとりができるのか考えたことがありますか?
この国際通信を大きく分けると、衛星を使った無線通信と海底にケーブルを張り巡らせた有線通信の2つの方 法があります。
無線通信は、地上約36,000Kmの上空で地球の自転と同じスピードで回っており、地上から見ればあたかも 静止しているように見える“静止衛星”と呼ばれる衛星を使う方法です。衛星による通信システムは大変に強力 なものですが、いくつかの弱点も持っています。
その一つは、地上から衛星までの間を電波が往復するのに時間がかかることです。そのためにテレビで衛星中継をするときなど、現地と司会者の話のきっかけがずれたりすることがあります。
それから二つ目は、気象状況によって通信状態が悪くなることです。気象条件の悪い時には衛星放送の画像が乱れたりすることを経験されていると思います。さらにもう一つは誰でも受信できる、つまり秘密が漏れやすいことがあげられます。
では、今回のテーマであるもう一つの方法、海底ケーブルシステムとはどういったものなのでしょう。

海底ケーブルシステムとは、大陸と大陸の間や本土と島の間の海底に通信ケーブルを敷いて、陸地内の通信網とつなぎ合わせるものです。海底ケーブルを使用すると、先に説明した衛星による通信の弱点を 見事に解決することができます。
例えば太平洋を挟んだ場合を例にとりますと、衛星を使用した場合の約8分の1の距離ですむことから、会話 のタイミングがずれることなく中継することができます。
また雑音が少なく品質の高い通信が可能であり、盗聴もされにくい点などが優れています。
海底ケーブルは当初、電信ケーブルを用い、モールス信号を電信していましたが、20世紀半ばに同軸ケーブ ルを用いてから音声を送れるようになり、現在のような通話ができるようになりました。さらには約10年ほど前か ら光信号を髪の毛ほどの太さの光ファイバーケーブルで送る光海底ケーブルシステムが登場し、通信容量が飛躍的に増大しました。

ところが、この最先端を行く光海底ケーブルシステムと言えど も長距離のファイバーケーブルを通過している内に光が弱くなることは避けられません。そこで、弱まった光をま た強い光に戻すために、“光海底中継器”と呼ばれる装置が必要になります。
この“光海底中継器”は世界でも数社しか製造することができないほど複雑なもので、当社もそれを製造しています。
何と言っても、“光海底中継器”は海の底深くに沈められるものですから、家電製品のように「ちょっと具合が悪 いので修理して」なんてことはできません。水深8,000mの水圧にも耐える頑丈な設計、そして25年間耐える製 品品質を保証することが必要になりますから、それはそれは品質には非常に気を配っており、通常よりはるかに 信頼性の高い部品を使い、埃のないクリーンルームで組立試験が行われて初めて製品となるのです。
ところで皆さんは、水深8,000mの水圧がどんなものか想像できますか?何と1センチ四方に800kgの重量ー 相撲の小錦関が3人位乗っかっている程の圧力がかかるんですよ!信じられませんね?。
このようにして作られた光海底中継器と、やはり海底8,000mに耐えられるよう製造された光海底ケーブルをつなぎ合わせて海に沈めるわけですが、この工事がまた一苦労なのです。
海底ケーブルと海底中継器を海に沈めていくための特殊な船を“敷設船”と言います。まず、陸上でつながれ たケーブルと中継器を、注意深く敷設船のタンクに巻き込みます。
タンクに巻き込むにはやはり人の手が頼り。何百キロメートルもの長いケーブルをしっかり収容します。その作 業が終わればいよいよ工事現場に向かっていざ出航です。

まず、海岸の少し沖合で敷設船がとどまり、いくつものブイ(浮き袋)をぶ ら下げたケーブルを小船で海岸まで引っ張って行き、そこで待ち受けた人たちが陸地へ引き上げます。引き上げ たケーブルは陸揚局と言って海底中継器に電気を送ったり、海の中を伝わってきた光信号を陸上通信網に接続 する装置につながれます。
あとは対岸に向かってまっしぐら、潮の流れやケーブルの沈んでいくスピードと船の速度をコントロールしなが ら24時間体制でケーブルと中継器を海の中に沈めていきます。
最後は先に対岸より引いてきたケーブルを海上で拾い上げ、船の上でケーブル同士を接続し海に沈め、その 後両方の陸揚げ局から試験を行い、異常がなければ工事が完了します。
このような工事をして敷設された海底ケーブルや中継器は、太平洋や大西洋を横断したり、東南アジアからヨ ーロッパまでをつなぐなど、今や全世界の海に張り巡らされています。
近年ではインターネットに代表されるように、マルチメディア情報が、かつてなかったほどのスケールとスピード で世界を駆け巡るようになりました。従来はもっぱら国際電話などの音声信号のやりとりに使われていた海底ケ ーブルシステムも、その役割が大きく変わろうとしています。
今後も更に新しい技術によりますます大容量化され、マルチメディア社会の根幹となる通信網を提供していくことが期待されているのです。
時にはネットサーフィンの手を休めて、世界中の海底深くを壮大なスケールで結ばれた光ケーブルと、それを敷 設するために懸命な努力を重ねている人たちについて思いを馳せて見ると、みなさんのパソコンの画面もまた違 って見えてくるのではないでしょうか?
※平成9年3月制作。