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NPO法人環境文明21 共同代表 加藤三郎
共同代表 藤村コノヱ
昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻に端を発した世界の同時不況は、すべての企業、特に製造業に巨大なインパクトをもたらしている。GM、クライスラーの破綻が象徴する自動車業界の大不振は、自動車産業との関連が深い電子電機業界も深刻な影響を与えている。矢野薫社長がおっしゃっているように、NECは2009年期には2,966億円の損失を計上せざるをえなかったし、09年度も厳しい事業環境が続くことが見込まれる。まさにNECも他の多くの企業と同じように、乱気流の中での操業を余儀なくされている。
しかし、このような時だからこそ、環境対策を新たな成長の原動力にしようと矢野社長は意図され、実際に、リチウムイオン電池、データセンターの省エネ化、さらには人工衛星「いぶき」による世界初の温暖化効果ガス観測センサーTANSO開発利用などを例に挙げておられる。1970年代の産業公害や二度に及ぶ石油危機という大ピンチが、その後の日本の企業、経済全体の大飛躍のきっかけ、チャンスになったという事実を知る者として、NECが長年にわたって培ってきた環境力を新たな成長の原動力として、今回のピンチをチャンスに変えてほしいとと願いつつ、このレポートに意見を述べる。
ここ数年、NECは温暖化対策にフォーカスした「環境経営ビジョン2010」の達成に全力をあげてきている。すなわち生産・オフィス活動から出てくるCO2と、お客様がNECの製品を使用することによって出てくるCO2の量を、NECが提供するソリューションによって相殺し、全体として排出と削減をマッチさせる。つまり実質的にCO2をゼロにするという野心的な目標を掲げて努力してきた。2010の達成時期は近づいてきており、傾向的には目標に向かって進展しつつあるが、現時点では目標から離れたところにある。
そのため、まず生産オフィス部門からのCO2については、自社ビルなどの照明・空調を含む省エネ化の徹底、AO機器の省エネ運用に特に力を入れていることがわかる。また、データセンターは熱をもちエネルギーを大量使用するため、空調の効率改善などにより省エネ化の進展を進めている。さらに生産部門ではPFC、HFC等温室効果ガスの削減を図り、物流もこれまで以上に力を入れている。一方、製品使用時のCO2削減は、製品自体を大幅に削減するしかないということで、製品の省エネ化を進め60%程度のカットを目指している。さらに、NECが提供するソリューションによって、それがない場合と比較して、220万トン程度のCO2削減を意図していることが読み取れる。
しかし現状の数値をみると2010年度(08年から10年の平均値)の目標値からはかなり離れているため、今後、格段の努力なければ、環境2010ビジョンの達成は困難であろう。そのためにはNEC自身のさらなる技術革新、およびNECの製品を使う消費者の環境配慮行動もさることながら、その行動の背中を押す諸制度、特に税制(優遇措置を含む)、排出量取引規制などの導入による自主的取組の後押しも不可欠であると考える。
NECの環境経営度が高いことは、たとえば日本経済新聞社が毎年行っている環境経営度調査や、他のメディア、官庁等が実施している各種顕彰制度で常に表彰対象になっていることからも明らかであるが、このような高い環境パフォーマンスを示すためには当然ながら、そこで働く役員、従業員の環境知識と行動力が必要である。NECはこうした優秀な人材を「エコ・エクセレンス」と名付けて毎年その数値を出してきている。NECの環境教育に長年携わっている私たちとしては「エコ・エクセレンス」層に加わる人数が増加し、NECグループで働く従業員の環境知識や環境行動力が向上していることを非常にうれしく思っている。08年度については調査対象をグループ全体に拡大したため、初めて参加する人も多くなり、エコ・エクセレンス層に属する人数の割合が07年度に比し減少しているが、これらの人も様々な情報を得て研修や実践を積むことによって、エコ・エクセレンス層へと変化していくことが期待される。
環境経営に向けた人材育成を体系化しようとする試みは注目に値する。NECは環境教育を一般社員、管理職、幹部に向けて様々な形で実施してきたが、それをさらに体系化・充実しようとする点は「企業にとっての人材の重要性」を認識した取組であり頼もしい。NECが今後事業のグローバル展開を加速させようとする中で、環境経営を活性化させることは不可欠であり、そのためにも「人材」を育てる教育の体系化と拡充は必須であるので、この試みがどのように展開していくか注視していきたい。
これまで温暖化対策を中心にコメントしてきたが、NECの環境経営は温暖化対策だけではない。資源循環も化学物質管理も重要であり、それぞれについて、レポートでは簡潔に要領よく触れられていて、いずれも進化が示されていることは評価に値する。
このように今回のレポートを見る限り、経済の不況にかかわらず、新たな成長を求めた新規の取組やこれまでの取組の一層の強化を図ろうとしていることがわかる。レポートそのものについてあえて注文をつければ、レポートの作り方が温暖化対策の間に、資源問題やコンプライアンス問題などがやや混在していて解りにくいる点だ。多くの読者の関心事である温暖化問題だけをまずまとめて記述し、その後に資源や化学品管理などの項目ごとに分けてもらうと、すっきりし読みやすかったかと思う。

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