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全日本空輸株式会社
整備本部
ラインメンテナンスセンター
羽田整備部
システム整備第二課
主席整備士
板垣 照二郎 氏

全日本空輸株式会社
整備本部
機体計画部
施設設備チーム
主席部員
安藤 潤二 氏
RFIDは、今後、当社にとって重要な技術になります。その先駆けとも言える今回のシステム導入の成功は、非常に大きな意味を持っています。
日本を代表する航空会社として、国内線・国際線ともに多くのお客様に愛されているANA様。同社グループの基本理念に「安心」と「信頼」という言葉があるように、航空会社にとって、航空機の安全運航と定時運航は最も重要なミッションとなります。
その実現のために欠かせない業務の1つが運航便の整備作業です。これは、航空機が空港に到着した後、次のフライトに備えて行う点検・整備作業のこと。羽田空港(東京国際空港)及び成田空港(成田国際空港)では、およそ800名の整備士がシフトを組み、1日あたり約440便分の運航便の整備作業に当たっています。
運航便の整備作業には、工具類の入ったツールボックス、機体の暗部などを照らすフラッシュライト、整備マニュアル、コックピットとの無線通話用のワイヤレスインターホン、事務所との通話に用いるマルチチャネルアクセス無線機など、様々なツールを用います。整備士は、これらの中から、自身が整備を担当する航空機の機種や整備内容に応じて必要なものを持参し、駐機スポットへと向かうのです。
このように様々なツールを使い分けることから、ツールの出納管理の面ではより正確に、より効率良く管理したいというニーズがありました。
「必要なツールをきちんと携帯しているかを確認することは、安全運航と定時運航にかかわる重要なポイントです。そのため、以前は、ホワイトボードに記載した整備士の氏名と持参ツールを記したマグネットシールを対応させるなどして、ツールの持ち出しと返却を管理していました」と同社の板垣 照二郎氏は語ります。しかし、もっと効率的な方法があるのではないか、という声が部署内にはあったそうです。一方、整備士は、運航便の整備に割り当てられた短い時間の中で作業に集中しなければならないため、管理のための作業を複雑にしてしまうことは避けねばなりません。
つまり、整備士に負担をかけず、管理精度及び効率性を上げるための仕組み作りの必要性が高まっていたのです。
このような課題を解決するために同社が着目したのがRFIDです。きっかけは、東京都大田区にあるNECの「RFIDイノベーションセンター」を見学した際に見たデモンストレーションでした。
「近い将来、機体部品をRFIDで管理する時代が来ると考え、NECのRFIDイノベーションセンターを見学させてもらいました。そこで見たデモンストレーションで、通信距離が長いUHF帯のRFIDなら複数のRFIDタグから情報を一括で読み取れることを知り、整備用ツールの出納管理に使えないかと考えたのです」(板垣氏)
こうした構想のもと、同社は、NECをはじめとする複数のベンダーに概略要件を提示。検討の結果、最終的にNECをパートナーに選定しました。
「提案内容はもちろん、RFIDタグやハードウェア、ソフトウェアなどをすべて一括提供できる安心感、提案から構築までを一手に引き受けてもらえる総合力、そして、RFIDに関する数多くの実績が選定の決め手になりました」と安藤 潤二氏は、選定の理由を説明します。
運航便整備用ツールの出納管理システム「LEVETシステム(Line Maintenance Equipment & Vehicles Entire Tracer System)」は、運用の定着期間を経て、2009年2月に羽田空港と成田空港で稼働を開始しました。現在、全16種、約2400個にも上るツールの出納管理を支えています。
LEVETシステムの実際の運用は次の通りです。
整備士は、運航便整備作業の開始前及び終了後に、携行ツールを持ったまま、事務所出入り口に設置されたRFIDゲートを通過します。持ち出し時には、RFIDゲートが読み取ったツール名と自身の氏名がタッチパネルに表示され、整備士は、その内容と自身の氏名、必要なツールをきちんと所持しているかを確認して通過します。
一方、返却時には、整備士が携行しているはずのツールと実際に携行しているツールが表示されます。仮に持ち出し時とツールの不一致があればシステム側が警告を発します。
「また、管理側も、蓄積した履歴によって、『誰が』『何を』『いつ』持ち出したか、あるいは返却したかを容易に把握できるようになりました」と安藤氏はLEVETシステムの成果を強調します。
こうした運用を実現するため、NECは、システムに様々な工夫を施しました。中でも特徴となっているのが、ツールごとに最適なRFIDタグが使い分けられている点です。
整備用ツールの形状や外装素材は、それぞれ異なります。そこでNECは、様々なRFIDタグの中からそれぞれのツールに適したタグと貼付方法をRFIDイノベーションセンターで繰り返し検証。その上で、実際の利用現場となる羽田空港の事務所出入り口にもRFIDゲートを設置し、実環境でのテストを繰り返し実施。読み取り精度の向上を図りました。
工夫の一部を紹介すると、通常のタグが使用できない金属製のツールボックスには、金属対応タグを2面に貼付して、ボックスの向きに関係なくRFIDタグを読み取れるようにしました。また、タグを貼付しづらい筒状のフラッシュライトの場合は、内部のわずかな隙間に貼付できるよう、タグをひも状にカスタマイズしています「最適な貼付方法を検討するためにフラッシュライトの分解まで行ってくれたNECの姿勢には、正直驚かされました」と板垣氏は話します。
「LEVETシステム導入当初は、これまでと違う管理方法にとまどう整備士もいました」と新しい運用方法の定着には苦労があったと板垣氏は打ち明けます。しかし、人手で管理していた頃と比べて、ツール管理の負担が大幅に削減された上、整備士が整備作業により専念できるようになったことが分かってきた今では、LEVETシステムは、なくてはならない存在だと認識されています。
最後に安藤氏は、NECの対応について「各整備用ツールの特性に合わせたタグの開発や読み取り精度の向上の追求など、NECの努力や対応にはとても満足しています。今回導入したLEVETシステムを契機に、RFIDを活用した新たなアイディアも社内で生まれつつあり、NECにはパートナーとして今後とも期待しています」と語りました。
NECエンジニアリング株式会社
第一システムソリューション事業部
ニュービジネスソリューション部長
清水 昌哉
日本電気株式会社
交通・運輸ソリューション事業部
ソリューション推進部
グループマネージャー
町井 宏治
今回、LEVETシステムの開発を通じて、ANA様の目指す航空機の安全・定時運航に貢献することができ、大変うれしく思っています。
開発時、最も苦労したのは、やはりRFIDタグの読み取り精度をいかに向上するかという点です。それぞれのツールに最適なRFIDタグを探し出し、最適な方式で貼付するだけでなく、RFIDゲートを通過する整備士の体の向きや歩くスピード、さらには、RFIDゲートに差し掛かった瞬間に忘れ物に気付き引き返すといった動作も考慮せねばならないなど、モノとヒトの両面から、あらゆるケースを想定しておくことが求められました。
その際、大いに力を発揮したのが、NECのRFIDイノベーションセンターです。
RFIDイノベーションセンターは、実環境に近い形でのお客様の商材を持ち込んでの実証実験ができるよう、物流の模擬ラインやRFIDゲートなどを設置した施設です。ANA様から整備用ツール一式をお借りして、ここで様々なケースを想定しながら読み取り検証を繰り返しました。こうした一連の取り組みが、読み取り精度の向上と実環境での検証期間の短縮に貢献できたのではないかと考えています。
RFIDの活用には、物流や小売での商品管理に代表される「モノ系」と、社員証などに代表される「ヒト系」とがありますが、今回のANA様のLEVETシステムは「モノ系」と「ヒト系」の両方の課題を解決した、これまでにない画期的なソリューションです。こうしたシステムを実現できたのも、RFIDタグの提供からシステム構築までを一貫して行えるNECだからこそ、と自負しています。今後は航空業界だけではなく、安全性が求められる鉄道業界や建設現場への展開も進めていきたいと考えています。
RFIDイノベーションセンターでの実証の様子
| 創業 | 1952年12月 | |
|---|---|---|
| 本社 | 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター | |
| URL | http://www.ana.co.jp/ | |
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(2009年3月12日)
「LEVET システム」は生まれたばかり。NECと共に改善点を克服し、空の「安全あんしん」を支える柱の1つに育てていきたいですね。