アジア・北米で最高級ホテルを運営するザ・ペニンシュラホテルズ様(The Peninsula Hotels)は2007年9月1日、東京・丸の内に「ザ・ペニンシュラ東京」をオープンしました。この新たな拠点には、絶好のロケーション、最上級のホスピタリティに加えて、もう1つのセールスポイントが盛り込まれています。NECの「UNIVERGE SV7000」と無線LANシステムをベースとした、業界初となる全館規模での音声・データ統合ネットワークです。 |
皇居外苑と日比谷公園に面した絶好のロケーションが選ばれ、建物の外装・内装などの設計仕様とともに、ネットワークおよびシステムに関する要求条件がまとめられたのは2003年末のこと。その中で特にポイントとなったのは、音声とデータを統合したフルIPのネットワーク構築を視野に入れたうえで、客室や各施設、従業員スペースはもとよりエレベータや非常階段なども含めた館内エリアの99.9%をカバーし、お客様と従業員の両方が有効活用できるワイヤレス環境を整備するということでした。 インフォメーションテクノロジー部門ゼネラルマネージャーのShane Izaks氏は、その狙いについて次のように語ります。「何よりも、お客様に対してよりよいサービスを実現していきたいと考えました。ホテル内のネットワークインフラをIPに統合すれば、お客様からのご要望に応じたさまざまなサービスを提供するためのアプリケーションを柔軟に追加していくことが可能になります。また、館内のどこでも電話やインターネットが利用できるワイヤレス環境を構築することで、お客様にモビリティというプラスアルファの利便性をご提供できます。さらに、これらの仕組みを従業員も活用することによって、高品質なサービスを効率的に行えるようになります」。 このような要求条件に対する具体的な提案は、ベンダー数社とのヒヤリングや打ち合わせを重ねながら、約2年をかけて吟味されました。その検討過程で、客室に常備したモバイル端末を、館内だけでなくホテルの外にも持ち出して利用できるようにしようという斬新なサービスが浮上したのです。Izaks氏は、「もともとアイデアとしてあったものでしたが、ベンダー各社と議論していく中で実現可能だという確信が生まれました」と振り返ります。 |
入念な比較・検討に基づいて、最終的にネットワークインフラ構築のパートナーに選定されたのはNECでした。 NECはこれまでに、PBXベースのホテルシステムをザ・ペニンシュラホテルズ様に納入し運用をサポートしてきた実績がありました。また、2006年には香港本社をはじめとする世界14カ所のオフィスと7つのホテルを結ぶVoIPネットワークの構築も手がけました。しかし、今回のベンダー選定に際しての決め手は「私どもの要求をほぼ完璧に満たしてくれる提案内容だったことです」と、Izaks氏は話します。NECの提案内容は、SIP対応IPテレフォニーサーバ「UNIVERGE SV7000」をコアとして、無線LANアクセスポイント「UNIVERGE WL1500-AP」で音声とデータを統合したワイヤレスIPネットワークを構築。加えて、モバイル端末にFOMA(R)/無線LANデュアル端末「N902iL」を採用することによって、館内ではワイヤレス内線電話、館外では携帯電話として利用できる仕組みを実現するというものでした。 2006年に入ってシステムの正式発注が行われ、建屋の建築工事と並行してネットワークインフラの構築がスタートしました。 なかでも、無線LANアクセスポイントについては、内装デザインのコンセプトを損ねることのないよう、お客様の目に触れない位置に設置する必要があったため、建設会社とNECが密に連携し、フロアごとに造成工事の段階で電波状況を逐一チェックしながら作業が進められました。そして、約1年をかけたインフラ構築が完了した後、全館の電波エリアの再検証と微調整を行い、客室や各施設、従業員スペースはもとより、階段部、エレベータ内もカバーした無線LAN環境が完成しました。 |
|
ホテル全館におよぶ無線LANを使った音声・データ統合ネットワークの構築は、業界で他に例のない先進的な取り組みです。そのシステム概要を紹介していきましょう。 サーバルームに設置された「UNIVERGE SV7000」は、計4台で二重化構成となっています。電話系と情報システム系を連携させるためのホテル業務向けシステム「NEPARC2000 Server」も導入されています。 無線LANアクセスポイントは約450台を設置。この環境下で、客室用と従業員用を合わせて約450台の「N902iL」、客室に標準装備されているインターネットラジオ、お客様が持ち込んだノートPCなどの利用を可能にしています。 各客室には、ザ・ペニンシュラホテルズ様がサービス向上のために自ら研究開発した、操作性に優れたディスプレイ付き電話機や浴室用スピーカーホンなど複数の端末が設置されています。これらも、もちろん館内の統合ネットワークに接続され、サービスオーダーや外線通話に利用することができます。 全客室に常備された「N902iL」は、フロント呼出しや各種ルームサービスなどをワンタッチないしはツータッチで使えるように設定してあります。館外に持ち出して利用する場合も、同様の操作でホテルのスタッフとやり取りできるようにしました。外線発信についても、ホテル内の客室からと同様に、課金の仕組みを開発しました。これによって 館内・館外を問わず外線を利用した分の通話料をチェックアウト時にまとめて精算できるようになっています。Izaks氏は、「端末の操作が非常に簡単なので、海外からのお客様もとまどうことなくご利用できると思います。さらに、当ホテルから地方に出張される場合でも、この端末を持ち歩いてお使いいただくことが可能です」と、その利便性の高さについて説明を加えます。 また、不特定多数のお客様が端末を利用することから、セキュリティ面も重視し、「N902iL」の標準機能を生かしてさまざまな対策を施しています。ただ、紛失や盗難、破損といったモバイル端末につきまとうリスクへの対策に関しては、運用面での注意を怠らないこと以外に手立てはありません。それでもIzaks氏は、「物理的なリスクを心配するよりも、お客様が当ホテルで快適に過ごしていただけることのほうがはるかに重要です」と強調します。 一方、従業員向けに導入された「N902iL」では、お客様からのサービスオーダーの内容に応じて適切なスタッフに情報を伝達するショートメッセージ機能が役立てられています。具体例としては、お客様が客室のドアを開けることなくランドリーを依頼できる「バレーボックス」というザ・ペニンシュラホテルズ様独自のサービスがあげられます。室内にあるボックスに洗濯物などを入れてバレーコールボタンを押すと、担当スタッフの「N902iL」にピックアップ指示のメッセージが送られ、即座に対応できるようになっています。
|
無線LAN環境およびモバイル端末に対する評価は上々です。Izaks氏は、「スタッフは皆、お客様へのサービス業務をスムーズに行うために不可欠なツールだと認識してくれています。使い方にもすぐに慣れたようで、今では『もしも取り上げられたら困る』というくらい便利に使いこなしています」と、顔をほころばせます。 また、開業後まもなく、ホテル内のレストランやスイミングプールなどで電話をしているお客様の姿を何人も見かけたことで、「今回のシステム導入の意義を実感でき、利用シーンの広がりに期待が膨らみました」と語り、サービスアプリケーションの拡充に積極的に取り組んでいく意向を示しています。そして、ネットワークインフラ構築のパートナーとしてのNECに対しては、「今回提案してくれた先進的なソリューションからも、『世の中を変えていきたい』という意気込みを感じました。さらなるサービス向上に向けた私どもの要望に、今後も継続して応えてほしいと思っています」と話します。 さらにIzaks氏は、東京で実現した統合ネットワーク環境を、他の拠点でも採用していく考えだと言います。ザ・ペニンシュラホテルズ様では、東京に続いて2009年、上海でのホテル開業を予定しています。業界の最先端を行くネットワークインフラと、それに支えられた“ペニンシュラホスピタリティ”を披露する場が増えるのは間違いなさそうです。 ※FOMA(R)は株式会社NTTドコモの登録商標です。 |

