JR、私鉄、地下鉄―。鉄道機関は、生活を支える重要なインフラであり、そこで使われるシステムには高度な冗長性や耐環境性が求められます。駅の改札口の手前で、電車の遅延や事故をいち早く知らせる旅客案内表示システムも同様です。こうしたシステムは24時間正常に動いていることが当たり前であり、必要な時に動かないといった事態は許されません。発車案内表示器をはじめ鉄道会社の表示装置を数多く手がけている株式会社新陽社様では、東武鉄道様向け旅客案内表示システム用にNECの堅牢ノート「ShieldPRO(シールドプロ)」を採用することで、システム全体の信頼性を大きく向上させることに成功しました。24時間連続稼働を半年以上続けていますが、故障は1件も発生していません。 |
|
「○○線は▲▲駅で発生した事故のため、現在、上り線で遅れが出ています」 最近、駅で表示される遅延や事故の情報が、リアルタイム性を向上している点にお気づきでしょうか。 鉄道の運行に支障が出ていることが早い段階でわかれば、仕事先へ連絡するなどの対応をすぐに行うことができ、乗客は大変に助かります。そこで鉄道会社各社は、異常時情報を少しでも早く把握し、全線で早く情報共有できる体制を整備してきました。特に近年では、ネットワーク環境の整備により、鉄道会社同士で異常時情報をすばやく共有することが可能になっています。 さらにここ数年で、改札口よりも手前に旅客案内表示システムを設置する鉄道会社が増えています。乗車券を購入するよりも前に情報を確認できるため、駅構内のホーム・階段での混雑を回避でき、利用者の安全性向上の実現など、トラブルを未然に防ぐといった効果を期待できます。 異常時情報を表示する必要がないときは、旅行・行楽に関する情報等を表示したりすることも可能です。 「○月○日、花火大会開催日は急行列車も当駅に臨時停車します」といったように、その駅に固有の情報を流せば、利用客の利便性も高まります。このように旅客案内表示システムは、顧客サービスを向上させ、説明責任を果たすことに加えて、運用しだいで付加価値を高めることもできるシステムなのです。 |
駅に設置されている駅名などの固定サイン、電車の行き先・発車時間・ホームなどを掲示する可変サインを開発・製造している大手メーカーが株式会社新陽社様です。 「東武鉄道様向け旅客案内表示システムについては、駅ごとに設置したパソコンで表示器を制御できるタイプを提案してきました。パソコンを用いることで駅務室の中で掲示内容をモニタリングしたり、本社と駅を結ぶ情報ネットワークに不具合が生じたときでも緊急情報を確実に表示可能なため、障害対策の観点でも有効なのです」と、同社の営業本部交通システム営業部 課長の武藤 恒尚氏は話します。 駅務室はスペースが限られているため、ノートパソコンを設置することになります。 「しかし、駅務室の運用環境はパソコンにとっては非常に厳しく、コンシューマ用やOA用のノートパソコンでは信頼性に不安がありました」と営業本部交通システム営業部 課長補佐の佐藤 充弘氏は説明します。 駅務室は出入りが多いためにホコリが絶えず舞っており、ホーム上に設置されている場合は激しい振動にもさらされます。さらに厳しいのは、終電と初電の間に数時間しか余裕がなく、ほぼ24時間連続稼働になることです。 「鉄道で使うシステムは、24時間の連続稼動が大前提です。必要になった時にすぐに使用できるように、常時待機させておくのが基本姿勢。コンシューマ用やOA用のパソコンでは考えられない厳しい運用環境なのです」と武藤氏は言います。 旅客案内表示システムは、緊急時に使うものだけに、ノートパソコンの故障で使用できない時間が発生するのは避けなければなりません。そこで、同社では耐環境性を強化した堅牢ノート「ShieldPRO」に着目。スピンドルレス化が可能なシリコンディスクモデルが発売されるのを待って、さっそく導入・検証に取り組みました。 |
|
同社が、ShieldPROに注目したポイントは、防塵性や耐振動性に優れていることに加えて、安定した24時間連続稼働を実現できる点。特に、駆動部分のないシリコンディスクモデルやWindows XP Embeddedを選択できる点は大きな評価につながりました。 「一般のWindowsには、インフラシステム用途ではまったく使わない機能が多く入っており、ディスクへの書き込みもユーザが知らないうちに頻繁に行っています。一方、シリコンディスクは駆動部分がないため堅牢なシステムを構築できますが、フラッシュメモリへの書き込み回数に制限があり、Windows XPで連続運用して使用するのに不安があります。そこで、組み込み用OS Windows XP Embedded のEWF(Enhanced Write Filter)という機能を使用しディスクへの書き込みを抑止させる事で対応しました。この機能を使用すれば、OSの設定を誤って変更してしまった場合でも、再起動する事で元の状態に戻せるので、わざわざOSを再インストールする必要がないという効果もありました」と、製造本部サイン部システム課 担当課長の須田伸一氏。OSのバージョンアップにも影響されない“このシステムのための組み込み用Windows XP Embedded”をシリコンディスクと組み合わせることで、スピンドルレス化し安定した24時間連続稼働を実現することができたのです。 組み込み用Windows XP Embeddedの開発にあたっては、NECも全面的に支援しました。組み込みOSの構築手順に関するコンサルティングに始まり、システム要件に応じた機能やドライバ選択、チューニングの技術支援など、きめ細かいサポートを提供。その結果、必要以上にメモリを使ったり、起動に時間がかかったりすることなく、“必要最小限”で動きの良い組み込み用OSを作り上げることに成功しました。
|
||||||||||||
|
ShieldPROを用いた東武鉄道様向け旅客案内表示システムは、2007年6月ごろから導入を順次開始し、34駅に配備されています。 「配備からすでに半年以上が経っていますが、一度も障害が発生していません。ShieldPROに変えた効果は明らかです。ハードディスクの故障が頻発する夏の暑さも、無事に乗り越えました」と武藤氏は話します。 別の鉄道会社でも、数年計画で段階的に全駅への整備と入れ替えを進めていくことを決定しました。この場合は、各駅で個別の情報を入力するニーズが高いことから、基本操作はShieldPROのタッチパネルでできるようにしています。マウスに慣れていない担当者でも、タッチパネルを操作するだけで、情報表示を止めるといったことが簡単にできるように工夫しているのです。 ShieldPROを選定したことで、部品1つ1つに対するトレーサビリティが確保できたことも大きな成果です。ShieldPROは、信頼性の高い部品を選び、高度なサポートを行っています。したがって万一故障が発生したときには、それがどういう原因から起きたものであるかを明確にして、他のシステムに波及しないための対策をすばやく講じることができるのです。また、製品の寿命が長い上、製造終了後も6年間部品交換などの修理対応が保証されています。 スピンドルレス化し24時間安心して連続稼働させることのできる信頼性の高いシステムができたことは、高く評価されています。今後導入会社が増えていけば、文字の表示のしかたが変わったり、音を出したい、ランプを点滅させたいなど、システムも多様化していくことも予想されます。こうした鉄道会社のニーズに応えながら、ShieldPROは確実に進化を遂げていくでしょう。
|
(2008年4月1日現在)







