NECはこのたび、動作中のプログラムを稼動状態のまま、別のコンピュータに移動させる「高速プロセスマイグレーション技術」を開発しました。システム運用管理ソフトウェアによって実現できる障害予兆機能と組み合わせて使用することで、プログラム無停止で動かしたまま障害を未然に防ぎ、コンピュータの運用の継続性を飛躍的に高めることができます。
今回開発した技術は、実行中のプログラムの稼動状態を読み出して他のコンピュータに移動し、プログラムを継続的に実行可能にするもので、以下の特長を有しています。
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使用メモリが約500MB程度の動画配信プログラムを1.4秒程度で移送できるなど、実用規模のプログラムを高速で別のコンピュータに移送可能。 |
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ハードウェアの保守のためにコンピュータを停止したり、システムやソフトウェアの変更のために再起動する場合でも、プログラムをあらかじめ用意した代替コンピュータに移して実行することで、ユーザに一切影響を与えずに作業を継続可能。 |
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負荷が特定のコンピュータに集中した場合でも、処理の一部をあらかじめ用意した別のコンピュータに移すことで利用者に影響を与えずに過負荷状態を解決可能。 |
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ネットワークを介して通信しているプログラムであっても、実行中のプログラムと通信相手の双方が、別のコンピュータに移動したことを意識せずに使い続けることができる。 |
近年、情報化社会の進展に伴い、企業が保有するコンピュータ数は増大しています。それらの管理を容易にするためにコンピュータ、ストレージなどの装置を仮想化し、業務に応じて構成を動的に変更することでIT資源を効率的に利用する方法が研究されてきました。しかし、コンピュータ上で動いているプログラムを高速に他のコンピュータに移送するためには、アプリケーションプログラムに引継ぎ機能を持たせる必要がありました。
このたびの「高速プロセスマイグレーション技術」は、稼動しているプログラムの内部状態をあらかじめ別コンピュータに転送しておき、移動の際には変更された部分だけを転送する技術により高速化を実現しています。またネットワークを介して通信している途中状態を読み書きする機能をシステムソフトに追加することで、ネットワークを介して通信しているプログラムも通信が途切れることなく転送することができます。この結果、実行中のプログラムを、コンピュータの保守や再起動に影響されずに無停止で動かし続けることができ、システム運用の継続性を向上し、コンピュータの資源をより有効に活用できるようになります。
NECは、今後、本技術の研究開発を強化し、障害により突然コンピュータが使えなくなった場合に運用を継続するためのコンピュータの自己修復技術の確立を目指していきます。
なお本発表は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)の一環として研究委託を受けている「大規模・高信頼サーバの研究」の成果の一部となっています。
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