NECはこのたび、環境に有害なハロゲンやリンを成分としている難燃剤を使用せずに、無機物の吸熱剤と独自な特性改良剤を添加することにより、高度な難燃性を有す植物原料バイオプラスチック(ポリ乳酸が主成分)を初めて開発しました。電子機器に広く適用可能な高い難燃性(UL規格で最高レベル達成)と同時に、OA機器の筐体用樹脂として重要な材料特性(耐熱性、成形性、強度等)も現在利用されている繊維強化難燃性ポリカ系樹脂に匹敵する性能を実現しました。今回の開発によってバイオプラスチックの電子機器への適用拡大が可能となり、電子機器の環境調和性を向上できます。
NECが今回開発したバイオプラスチックの特長は、次の通りです。
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有害なハロゲンやリンを成分としている難燃剤を使用せず、安全性の高い無機材料の吸熱剤を添加することにより、バイオプラスチックとして高度な難燃性を初めて達成した(UL規格で最高レベルの5VおよびV-0、試験片1.6mm厚)。
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独自な特性改良剤(高流動化剤、衝撃改良剤)の併用により、他の主要な実用特性(耐熱性、強度、成形性)も、筐体材料として使用できるレベルを実現した。(デスクトップ型OA機器に使用されている、高耐熱・高強度の繊維強化難燃ポリカ系樹脂並みを達成)。
NECは、本新素材を今後2年以内に電子機器に実用化していく予定であり、さらに研究開発を強化していきます。
<用語解説>
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バイオプラスチックとポリ乳酸: バイオプラスチックは、植物資源を原料としたプラスチックであり、石油枯渇対策や、地球温暖化の要因とされている炭酸ガスの固定化対策を実現できる。中でも、トウモロコシ等の発酵で作った乳酸を重合させたポリ乳酸がバイオプラスチチックとして初めて量産化されている。しかし、電子機器用としては、難燃性、耐熱性などが不十分であった。このため、これらの特性の改良が行われているが、特に難燃性の達成が大きな課題であった。 |
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(2) |
難燃性: OA機器等の電子機器に使用するプラスチックには、火災防止の
ため、難燃性が要求されている。この難燃規格としては、現在、米国のUL規格が一般的である。通常のパソコン、プリンター等のOA機器では、この規格でV-0、悪くてもV-1を満足させることが要求されており、これより低い難燃性の場合、そのプラスチックの利用できる用途はかなり制限される。この他、特に高発熱性の機器(液晶プロジェクター等)では、さらに高度な5V達成が要求されている。 |
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★UL規格(94V)概要 : 難燃性は、5V>V-0>V-1>V-2の順で良好
難燃性分類 |
樹脂試験片の消火時間 |
溶融樹脂の滴下物で発火 |
5V |
60秒以下(1本) |
発火なし |
V-0 |
50秒以下(5本合計) |
発火なし |
V-1 |
250秒以下(同上) |
発火なし |
V-2 |
250秒以下(同上) |
発火あり |
5V: |
試験片は5本で、12.5cmの長さの炎を5回接炎し(各5秒)、1本の消火までの燃焼時間が60秒以下 |
V-0〜V-2: |
試験片は5本で、2cmの長さの炎を2回接炎し(各10秒)、消火までの5本の合計燃焼時間を測定 |
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(3) |
難燃剤: プラスチックは燃えやすいので、通常は難燃剤を添加するが、従来の難燃剤は、ハロゲンやリンなどの安全性が不十分なものを含有するため、環境安全性に課題があった。一方、無機材料の吸熱剤は安全性が高いが、他の特性(強度、流動性等の成形性)への悪影響があった。 |
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NEC 研究企画部 企画戦略グループ
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