NECはこのたび、Peer-to-Peer(以下P2P)技術を用いて、低コストかつ安全・安心に各種のコンテンツ流通、情報発信を可能にするセキュア情報流通プラットフォーム「P2PWeb(TM)(注1)プラットフォーム」を開発しました。
このたび開発した「P2PWeb(TM)プラットフォーム」は、安全・安心な次世代のコンテンツ流通基盤を実現するソフトウェアライブラリで、主な技術的特長は以下の通りです。
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情報を効率的に管理する分散ハッシュテーブル(DHT)技術を利用して、サーバを介さずに端末同士で情報を交換する大規模なネットワークを実現。 |
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デジタル著作権管理(DRM)技術を利用したトレーサビリティや暗号を利用したアクセス制御などのセキュリティ機能を用意することで安全・安心なコンテンツ流通が可能(注2)。 |
近年、世界各国で急速に普及したファイル交換ソフトがP2Pの代名詞のような存在になり、非常に多くの利用者がその利便性を認め、既にネット上を流れるトラフィックの6割以上がP2P通信に使われています。その一方で、著作権を無視した違法コピーや不法コンテンツの流通が社会的に大きな問題となっていますが、これまで個人プログラマやベンチャー主導により開発されアングラ中心に広まってきたファイル交換ソフトでは、それらを解決する術がありませんでした。
このたびの開発は、こうした課題を克服するもので、この情報流通プラットフォームの上にアプリケーションソフトを構築することにより、著作権を保護した形でのコンテンツ交換やコンテンツ流通経路の特定が可能になります。また、同プラットフォーム上では、映画・音楽のようなコンテンツを交換するソフトだけでなく、電子掲示板・ブログのようなコミュニケーションソフトなど様々な安全・安心なアプリケーションを低コストで構築することができるようになります。
従来は、P2Pにより実現される、ネットを介した不特定多者間のコミュニケーションは一部のヘビーユーザーによる利用が中心でしたが、本プラットフォーム上に構築された多種多様なサービスを利用することで、P2P通信の裾野を大きく広げ、一般ユーザーも安心して情報発信をし合うような世界を実現することができます。
NECの「P2PWeb(TM)プラットフォーム」は、DHT技術でコンテンツ所在情報などの情報を完全に分散管理し、サーバを全く介さずにコンテンツをやりとりすることができ、これまで大規模なコンテンツ配信を行う際に問題となっていたサーバのボトルネックを解消することができます。また、利用者数やコンテンツの増加に応じてサーバ、ストレージ、ネットワークなどを増設したりする必要がなくなるため、収益見通しが不透明なサービスでも少額投資で開始することができるようになります。NECでは、分散したコンピュータ・ネットワーク資源を共有することによるP2Pのスケーラビリティのメリットを最大限に追求し、将来的には100億人規模のネットワークでも、情報交換し合えることを目標として研究開発を進めています。
また、本プラットフォームにより、さまざまなコミュニティの形成と情報交換が簡単に実現でき、ネットを利用する個人から従来以上に安全・安心な情報発信が可能となります。アクセス制御を行うことにより、オープンなネットワーク上にメンバーが限定されたユーザグループを作成することができ、グループ内に閉じたコミュニケーションやグループをまたがった情報交換などが自由に行えるようになります。このアクセス制御は、暗号技術のみで実現しており、グループ管理サーバ等を立てる必要がないため、簡単に導入することができます。また、DRMを利用したトレーサビリティ技術でコンテンツの流通経路を制御し、もれなく把握することで、コンテンツ流通・利用状況の調査や、利用者のP2Pネットワークへの貢献度に応じたポイントバックのサービスなどが実現できます。
このたび開発した「P2PWeb(TM)プラットフォーム」は、コンシューマ向けのサーバレスなコミュニティ情報共有システム、大規模な掲示板システムとして利用できるだけではなく、企業においてもバーチャル組織での情報共有などさまざまな利用シーンが考えられます。利用の第一弾として、専門性の高い知識の共有を目的とするプロフェッショナル・コミュニティ向けの情報共有・コミュニケーション基盤として採用予定で、来年度の実用化を目指してアプリケーション開発を行っていきます。また、大規模コンテンツ配信を行うネットワーク基盤としても実用化検討を進めています。
NECは、このたびの開発がユビキタス時代の個人・企業からの情報発信・情報流通を促進する技術と考え、今後、本プラットフォームを基盤としたサービス事業展開を目指して実用化を進めていきます。
(注1) |
「P2PWeb(TM)」はNECの商標です。 |
(注2) |
アクセス認証・トレーサビリティ機能を含むセキュリティ機能を利用するには、トレーサビリティサーバが別途必要になります。 |