
金星探査機「あかつき」は、日本初の金星探査機であり、世界初の惑星気象衛星です。
金星全体の大気の動きを調べ、金星気象学/比較惑星気象学を確立することを目指しています。
NECはJAXA様のご指導の下、「あかつき」のトータルシステムの開発、製造、試験に携わっています。
「あかつき」の目的
金星と地球は、ほぼ同じ大きさ、ほぼ同じ質量です。
金星のことがよく分かれば、地球に対する理解も深まると考えられています。
金星の大気循環のしくみには、まだ解き明かされていない謎があります。金星の大気は、金星自身の自転速度の60倍もの速度で回転しており、この事象はスーパーローテーションと呼ばれています。この謎に包まれた金星大気を調査するのが、「あかつき」のメインミッションです。
「あかつき」ミッションの特徴
様々な波長のカメラで、様々な高度の雲の様子を同時に撮像することにより、金星の雲の3次元的な動きを把握することができます。

「あかつき」は金星のほぼ赤道上空の長楕円軌道を周回します。金星に最も近づくところでは高度約300km、最も遠いところでは高度約80,000kmになります。
- 遠金点(金星から最も遠ざかるところ)付近では金星大気に同期して移動し、長時間に渡って同一の雲の変化を観察します。
- 近金点付近(金星に最も近づくところ)では金星大気に対する相対的な位置関係を変更し、大気の別の場所の上空に移動します。

また、金星の大気は96%が二酸化炭素です。二酸化炭素による温室効果のために、地表面の温度が460℃という高温になっています。金星大気を調べることによって、将来地球の温暖化が進んでしまった場合に、どのような対応が有効であるか分かるかもしれません。「あかつき」の観測データを、地球の温暖化のプロセスを理解するためにも役立てたいと考えます。
「あかつき」のテクノロジー
NECは「あかつき」のシステムインテグレータとして、プロジェクトの初期の段階から、システム設計など主要な役割を担ってきました。
また、モノづくりのフェーズにおいては、構造系/熱制御系の設計/製造を進めると共に、電源系/通信系/データ処理系/姿勢軌道制御系といったバス機器を設計/製造しました。更に、ミッション機器としては、紫外カメラ(UVI)、中間赤外カメラ(LIR)を開発しております。
バス機器の特徴
- バスシステム全般
- 主機器を搭載した3つのパネルを一体で扱うことにより、システム電気計装(ケーブル)を、中継コネクタ無しで配線し、バスシステム全体の軽量化を図る。
- 構造系
- メインのロードパス(主構造)として、アルミハニカムコアCFRPスキンのスラストチューブを採用し、軽量化を図る。
- SAP (Solar Array Paddle)
- 地球の2倍の太陽光強度に耐えられる耐高温/耐低温SAPを開発。
- 熱制御系
- 軽量化のために小型化したSAPで探査機の電力需要を賄うため、ヒータの電力供給を平準化し、ピークの電力が出ないようにできるソフトウェア制御を採用。
- 電源系
- 太陽距離が変わり、太陽電池の電圧が変化しても、常にピークパワーまで取り出せるSeries Switching Regulatorを採用。また、バッテリとしては、リチウムイオン2次電池(23.5Ah×11セル直列×2台)を開発。
- 通信系
- X-band高利得アンテナ(X-band High Gain Antenna)には、ラジアルライン給電スロットアレイアンテナを採用し、集光を避けると共に、軽量化を図る。また、メインのパワーアンプとしては、小型軽量の20W 進行波管増幅器を採用。
- データ処理系
- テレメトリを出したい時、予め決められた上限までであれば自由に出せるOn Demand Telemetry方式を採用。特に、Report Packetを定義することにより、探査機の状態の変化を短いPacketで出力しておき、可視の最初でまとめて確認することができる。また、自由度の高い自動化自律 化機能を搭載。
- 姿勢軌道制御系
- 各種姿勢センサ(Star Tracker 2台、Inertial Reference Unit 3台、Fine Sun Sensor、Coarse Sun Sensor 5台)を組み合わせてて姿勢を決定し、斜交配置したリアクションホイール4台にて姿勢を制御する3軸姿勢制御系を採用。高度な故障検出分離復旧機能により、信頼度の高い構成としている。
- ミッション系
- 4カメラを制御し、画像処理も行うDE(Digital Electronics)を開発。DR(Data Recorder)機能と統合することにより、高速での画像記録も可能とした。また、民生用ボロメータカメラの設計資産を生かし、中間赤外カメラ(LIR)を開発。また、フィルタホイール付紫外イメージャ(UVI)を開発。
- 運用計画系
- 探査機から見た金星の様子や地球方向を視覚的にユーザに提供し、観測や可視運用の内容を指定させ、種々の制約(電力、通信リンク、姿勢etc)を考慮した上で、運用手順書/マクロコマンド/タイムライン(絶対時刻指定コマンド列)を生成する。
ミッション機器の説明

中間赤外カメラLIR
波長10µmの赤外線で雲の温度を映像化し雲層上部の波動や対流、夜側の雲頂高度における風速分布を明らかにする。
LIRが撮影した地球
紫外線イメージャUVI
雲の形成に関わる二酸化硫黄や、紫外波長で吸収をもつ未知の化学物質の分布を紫外線でとらえるとともに、その変動から雲頂高度での風速分布を求める。
UVIが撮影した地球(人工的に着色)
あかつきの状況
現在「あかつき」は、順調に飛行しています。金星への最接近および金星周回軌道への投入は12月7日となる予定です。